クローン病・症状・痛み・病気
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クローン病・症状/痛みと病気
クローン病/下腹部全般/下腹部/痛みと病気
1932年マウント・サイナイ病院の医師クロ
ーンは、ギンズバーグ、オッペンハイマーら
とともに、 かつてまれな病気を原因不明の
回腸末端炎として報告し、1973年にはWH
Oの 医科学国際組織委員会がその概念を
発表し、知られるようになりました。 日本で
も1975年に厚生労働省で、 特定疾患クロ
ーン病調査研究班が発足し、研究が開始さ
れました。 このクローン病は年々増加傾向
を示している今だ原因不明の疾患で、子供にも高齢者にも見られますが、10〜30歳代(特に20歳代)
の若い層に多く、欧米では女性に多いが、日本では男性が女性の2倍の発症率を占めております。
§1
クローン病(痛み・病気)の症状/
クローン病/下腹部全般/下腹部/痛みと病気
クローン病の病変は消化管のあちらこちら
に スキップするように炎症が広がります。
クローン病の潰瘍は 粘膜の深いところに
まで達し、瘢痕化や引きつれ・狭窄をおこ
し、腸内容物の通過障害がしばしば発生
します。
代表的な
症状は腹痛
で、初期は一過性でそれ程気になりませんが、腸管の潰瘍や炎症が重篤であれば
あるほど腹痛の症状も強くなります。
物を食べるたびに下腹部に差し込むような痛みを感じ
たり
、また、腸
に狭窄がある場合には、 その
狭窄のある部分で内容物が通過する際には、激しく痛んだり悪心や嘔吐を
確認
する事もあります。
腸の炎症によりお腹全体が痛む様になります
。大腸の炎症により
水様性の下痢になったり
、小腸の病変に
より消化や吸収が阻害され、
下痢や体重減少
の原因になります。 下血は少ないのですが、
大腸型では下
血も確認されます
。時には
大量に下血し、ショック状態に陥る事があります
。 厚生労働省の調査による高
頻度確認症状では、
腹痛、下痢、発熱、体重減少、貧血
などです。
初発症状として腹痛・下痢
が上げられ
ますが、 炎症の進行により、
発熱・栄
養障害による体重減少・貧血も確認さ
れる
様になります。 症状が悪化すれ
ば、 大腸や小腸に穴が開き(瘻孔)、
場合によっては腸と腸が瘻孔で繋が
る事もあります。 腸によく確認される
病変では、
瘻孔、膿瘍、癒着、狭窄、
閉塞などです。
クローン病は、寛解や再燃を繰り返す特徴がありますが、繰り返しながら進行しすると、様々な
合併症
が
確
認される様になります。特に
痔
瘻
や
.周囲膿瘍
、
痔核
、
裂肛
など.の病気が多く合併するのが特徴で、
若年でこれらの疾患が確認された場合には、 クローン病を疑う必要があります
。大腸型では大腸の病変に
先立ち、.病変が現れる事もあります。
その他の合併症では関節炎、虹彩炎、結節性紅斑、胆石、吸収不良、腎結石などがあり、関節炎・骨関節
炎などにより関節が腫れ、関節リウマチと間違う事がよくあります。この場合には消炎鎮痛剤で改善する事
もありますが、腸の病変の改善を優先しないと、なかなかよくなりません。 その他にも、皮膚炎・口内炎・ブ
ドウ膜炎・角膜病変なども高頻度に合併します。(その他/脂肪肝、肝硬変、末梢関節炎、腸・子宮
瘻、腸・
皮膚
瘻、直腸
瘻、腸・膀胱
瘻、腸閉塞、胆嚢炎、膵炎、強直性脊椎炎、皮膚炎)
§2 クローン病とは
/
クローン病/下腹部全般/下腹部/痛みと病気
クローン病は国指定の難病で、腸に炎症が起こり、糜爛や潰瘍が出来る病気です。クローン病は口から肛
門までのあらゆる消化管に発生します。 病変が確認される部位からは、小腸型(30%)、大腸型(30%)、
小腸大腸型(40%)などに分類され、小腸の病変は殆どの症例で認められます。また、クローン病の潰瘍
は、腸粘膜の深いところにまで達し、酷ければ、腸に穴(瘻孔)が開く事もあります。クローン病の炎症は強
いのです。また、回盲部限局型や皮膚などの消化管以外の臓器にも、病変がみられる事があり、発熱・栄
養障害・貧血・関節炎・虹彩炎・肝障害などの全身性の合併症も起こりえます。
クローン病は近年の研究結果から、免疫異常が関与しているという報告があります。免疫に深く関与するサ
イトカインの中に
TNFα
という物質がありますが、クローン病では、マクロファージが機能異常を起こし、この
TNFαが限度を超えて大量に放出されてしまうために、異常が起こるという考え方です。 TNFαが過剰に放
出されますと、制御がきかなくなり、自分の腸管を攻撃してしまうとしています。 これが腸管に炎症を起こし、
傷つけてしまうのがクローン病のメカニズムの一つではないかという考え方です。
§3 クローン病の治療
/
クローン病/下腹部全般/下腹部/痛みと病気
クローン病は原因不明の疾患で、これを完全に治す治療法はまだ確立されておりません。従い治療の基
本は、栄養療法と薬物療法を組み合わせ、活動期治療と寛解維持療法を行う方向で実践されております。
症状をコントロールし、再燃を抑える厚生労働省の治療指針に基づくものです。
栄養療法
は、海外では行われておりませんが、蛋白質や脂肪を除き、お腹への刺激を少なくした成分栄
養剤を摂取します。腸を休ませながら、栄養を補給してゆきます。これにより食事からの異物の侵入を防
止する事もできます。 症状が落ち着いてきましたら、栄養剤を減らして徐々に普通の食事の比率を高め
てゆきます。
薬物療法
では、栄養療法と併用して行いますが、潰瘍性大腸炎にも使用します5-ASA製剤(5−アミノサリ
チル酸製剤/サラゾピリン;SASP)や副腎皮質ホルモン(プレドニゾロン)、免疫抑制剤(6−メルカプトプリン)
などを用います。これらの薬剤を使用しても改善が見られない場合にはインフリキシマブ(レミケード)という
新薬も用います。このインフリキシマブ(レミケード)は前述しました
TNFα
の働きを抑えるもので、抗TNFα
抗体療法(抗サイトカイン療法)として注目されております。 従来の治療で無効であった中等症から重症の
患者や腸管皮膚瘻を合併する患者で有効性が示されております。
インフリキシマブ(レミケード)は米国で
は1998年から使用されておりますが、 我が国では
長期間投与のデータなどや副作用など、 解明すべき
点が有りますので、 今後に期する分野も多いと言わなければなりません。現況で判明しておりますのは副
作用として脱髄疾患が起こったり、 免疫力が極端に抑制されるため、結核などの感染症や悪性腫瘍の発生
の危惧が懸念されております。その他にもIL-6レセプター抗体などの治療薬の開発も進められております。
その他
に腸内細菌叢にプロバイオティクス、シンバイオティクスが腸内環境の改善に有効で、維持療法や
下痢症状などの治療にも用いられます。
白血球除去療法
は腸管の炎症部分に働いている活性化した白血球を体外循環回路で、吸着膜などで除
去する方法です。潰瘍性大腸炎では保険も適用されておりますが、クローン病では治験中です。
外科治療
は腸などに穿孔、瘻孔、腸閉塞、膿瘍、出血、.部病変などでは選択されます。然しながら、ク
ローン病では根治に繋がらないために、切除は出来るだけ小範囲にとどめるのが原則です。狭窄には拡張
を目的とした狭窄形成術が行われます。
クローン病診断基準改訂案
(by 厚生省特定疾患難治性炎症性腸管障害調査研究班)
1
主要所見
a
縦走潰瘍
b
敷石像
c
非乾酪性類上皮細胞肉芽腫
2
副所見
a
縦列する不整形潰瘍または
アフタ
b
上部消化管と下部消化管の両者に認められる不整形潰瘍または
アフタ
確定診断例
1
主要所見の a or b を有するもの(
*1
*2
)
2
主要所見の c と副所見のいずれか1つを有するもの
疑診例
1
副所見のいずれかを有するもの(
*3
)
2
主要所見の c だけを有するもの(
*4
)
3
主要所見 a 又は b を有するが虚血性大腸炎、潰瘍性大腸炎と鑑別が出来ないもの
*1
A
縦走潰瘍
だけの場合、虚血性大腸炎を除外する事が必要である
*2
B
敷石像
だけの場合、虚血性大腸炎を除外する事が必要である
*3
副所見bだけで疑診とした場合は同所見が3ヶ月恒存する事が必要である
*4
腸結核などの肉芽腫を有する炎症性疾患を除外する事が必要である
クローン病の診断基準
(by 厚生省特定疾患難治性炎症性腸管障害調査研究班)
@
非連続性又は区域性病変
A
敷石状病変又は縦走潰瘍
B
全層性炎症性病変(腫瘤又は狭窄)
C
サルコロイド様非乾酪性肉芽腫
D
裂肛又は瘻孔
E
.部病変
@ABの症状がある→疑診
@ABの症状があり、CDEの症状のうち1つが加わる→確定診断
Cの症状がある場合は、@ABのうち2つ当てはまれば確定診断とする。
縦走潰瘍
(結腸紐に一致する)
敷石像
関連検査値
CRP
陰性、
赤血球沈降速度
、
IOIBD
(アセスメントスコア)/2点以上は活動期
§4 クローン病のリスクファクター
/
クローン病/下腹部全般/下腹部/痛みと病気
クローン病は現況では明確に原因は判明しておりませんが、厚生労働省の難治性炎症性腸管障害調査
研究班が行った
クローン病の発症前の食事因子の調査結果
を発表しております。これは、1996、11〜
1998、10までの期間で、クローン病患者の食生活の実態調査の様なものと考えられますが、調査該当
施設の患者数などの制限を厳しくつけて (癌・自己免疫・消化性潰瘍・慢性長疾患以外)、 データを絞り、
対照例173例に付いて調査したものです。調査結果は、夫々の食品のカテゴリーごとにリスクの大きさを
数値化して現しております。 数値の大きいほどクローン病になり易いという考え方でリスク度を表現してお
ります。 (食生活の欧米化により、食事内容の変遷で引き起こされる腸内細菌叢の変化と代謝・産生産物
などが、免疫や消化管機能などに影響を及ぼしているのではないかと考えられております。)
即席食品
3.1
ハンバーガー・ホットドッグ・フライドチキン・インスタント麺・フライドポテト
砂糖食品
3.5
甘い菓子/チョコレート・ヨーグルト・スナック菓子・ケーキ・菓子パン・饅頭・和菓子
野菜
0.5
煮野菜・野菜サラダ・漬物
果物
0.7
母乳保育
0.6
喘息・アトピー・麻疹・虫垂切除はリスクファクターに影響を与えない
その他、クローン病の人が控えめにしたい食品として、玄米・タコ・イカ・牛乳・豚肉・食パン・大豆製品・ラー
メン・イチゴ・梨・アーモンド・バター・柿・レモン・牛蒡・サツマイモ・酸味の強い柑橘類・山菜・香辛料・コーヒ
ー・アルコールなどが上げられております。
クローン病は様々な因子が複雑に関与していると考えれておりますが、遺伝的な要因が存在する場合には、
免疫反応の異常が起こり易くなると推測されており、増悪因子としましては上記の食生活の因子以外に、細
菌やウィルスなどの感染症、小児の衛生状態、ストレス・過労、喫煙習慣、経口避妊薬の服用なども考えら
れております。 更に免疫機能に影響を与える可能性のある虫垂や扁桃腺などの部位の手術の有無なども、
クローン病罹患の可能性があるのではないかとの研究もされております。
*
クローン病合併症
;
クローン病は、寛解や再燃を繰り返す特徴がありますが、繰り返しながら進行すると、
様々な合併症が確認される様になります。 特に
痔
瘻
や
.周囲膿瘍
、
痔核
、
裂肛
など.の病気が多く
合併するのが特徴で、 若年でこれらの疾患が確認された場合には、クローン病を疑う必要があります。大
腸型では大腸の病変に先立ち、.病変が現れる事もあります。
*
IOIBD
アセスメントスコア
;by International Organization for the Study of Inflammatory Bowel Disease
IOIBDアセスメントスコアはクローン病の
症状に 他覚所見を加えた評価をする方
法で、CRP陰性、赤沈値正常で、各項目
が夫々1点とカウントして その合計点で
評価し、 0〜1点は寛解状態・2点以上
は活動期と判定します。
@
腹痛
A
1日に排便回数6回以上又は粘血便
B
.部病変
C
瘻孔
D
その他の合併症
E
腹部腫瘤
F
体重減少
G
発熱(38℃以上)
H
腹部圧痛
I
貧血(ヘモグロビン10 g/dL以下)
病勢判定は、他に1週間の排便回数、自覚症状、貧血の程度、下痢止めの使用なども総合的に計算する
CDAIも用いられる事があります。150点以下で寛解状態、150点以上で活動期と判定されます。
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