乳癌(乳がん)・症状・痛み・病気

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乳癌(乳がん)・症状/痛みと病気




     
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乳癌(乳がん)・症状/痛みと病気



     
乳癌(乳がん)/乳房部/胸部/痛みと病気


      
女性の癌の一位は乳癌ですが、乳癌(乳がん)のシコリはストーニー・ファームといわれる感触、即ち石の様な

      硬さを意味する表現で現されます。 これに対しまして、良性の場合、その感触はエラスティック・ソフトと表現さ

      れる様に、軟らかい感触のものです。 (ただし、弾力がある場合でも乳癌のケースはあり、硬くても良性の場合

      もあります。)シコリは線維腺腫や乳腺症の様な良性のものでも確認されます。シコリの約9割は良性のものと

      いわれております。落ち着いて、しかし、早急に受診しましょう。腋の下のリンパ節にシコリを感じる場合や、シコ

      リを感じずに、シコリを発見する事もあります。 乳房を自己診断する場合、腋の下にも同時に注意して触るよう

      にして下さい。乳房の一部が硬く感じる場合も注意して下さい。月経時の乳腺が硬くなる場合は、異常ではあり

      ませんが、 月経が終わっても症状が続く・月経に関係なく気になる硬さがあるなども早急に受診しましょう。決

      め手は早期発見です。乳癌(乳がん)は乳房のどこにでも発症する可能性が有りますが、発症部位として比較

      的多いのは乳腺です。(乳腺は乳管と小葉、そしてそれらの支持組織で構成されております。)




      
* 乳癌の予防知識;@厚生労働省研究班は週にビール大瓶7本に相当する量を超える酒を飲む女性が乳癌に

      なるリスクは、全く飲まない女性の1、75倍と発表しました。 それによりますと、毎日ビール大瓶1本を飲んだ場

      合の1週間のエタノール量(150g)を目安にし、 日本酒なら7合、ワインなら14杯、ウィスキーならダブル7杯に

      相当するもので、150g超飲む人にリスクが1、75倍出会ったというものです。 これは欧米で報告されていた飲

      酒と乳癌発症リスクとの関係を、 日本人でも裏付けたとされています。 A乳酸菌飲料や大豆製品を10代〜40

      代にかけて頻繁に摂取した女性は、乳癌発症のリスクが低かったと京都大学病院のグループが米乳癌シンポジ

      ウムで発表しました。それによりますと、飲料を週4回以上摂取していた人は、週3回以下の人に比べ、乳癌の危

      険性が減少、豆腐、納豆、味噌などの大豆製品でも 摂取量が多いほど危険性が低下する傾向が見られた とい

      うものです。 (対象は40〜55歳の早期乳癌患者300人と同じ条件で乳癌ではない約660人で、小学校高学年

      から40代にかけての乳酸菌飲料などの摂取頻度の調査です。)





     
§1  乳癌(乳がん)(痛み・病気)の症状/乳癌/乳房部/胸部/痛みと病気


       
乳癌(乳がん)の初期は自覚症状が希薄です。乳癌(乳がん)の初期の場合は痛みも有りません。しこりは

       固く弾力性があり
、梅干の種を肉まんの中に入れたものを外側から触れた様な感触です。表面は凸凹で境

       界ははっきりしています。 進行しますと、このしこりが筋肉などに癒着するために境界が不鮮明となり、動き

       も悪くなり、
乳房の皮膚が赤くなったり、爛れたりしてきます。乳癌(乳がん)発見の決め手は、乳房の一部

       がへこんだり
乳頭から血の混じった分泌物が出たり乳頭周辺の爛れや引きつりなどがある事を発見しま

       したら、すぐ受診する事です。
乳頭の爛れが治り難く、カサブタを作り、再度糜爛を作るなどの場合には、非

       浸潤癌パジェット病の可能性もあります。
乳癌で痛みを感じるケースは、末期の場合で持続性の激しい痛み

       を感じます。 又、乳房に痛みのある病気は乳腺症、 乳腺炎、乳房付近の筋肉痛、肋間神経痛などがありま

       すが、
乳腺に痛みを感じたのをきっかけに乳癌が見つかる事もあります。乳癌の主な症状は乳房に硬いしこ

       りがあること、乳頭から血性分泌液が出る事、乳頭部に糜爛がある事、乳房の皮膚に引きつれがある事、腋

       窩リンパ節に腫れを感じる事、 遠隔転移による腰痛などの症状などがあります
皮膚が赤く腫れ、毛穴がボ

       コボコして、オレンジ色の様になる場合
、乳腺炎もありますが、炎症性の乳癌の可能性もあります。この場合

       には
痛みや熱っぽさを伴なう事もあります





     
§2  乳癌(乳がん)と脂肪組織/乳癌/乳房部/胸部/痛みと病気


       乳癌(乳がん)は今も増加傾向の癌です。特に65歳未満の世代の女性では、癌死亡率の第一位を示して

       おります。閉経後乳癌は、脂肪の摂取と関係があるとされ、食生活の欧米化などで、今後も増加傾向が予

       想されております。 (閉経期以後は副腎由来ホルモン、アンドロゲンが脂肪組織などのアロマターゼにより

       エストロゲンに変換されるため皮下脂肪が多いと沢山のエストロゲンが生成される。/アンドロゲンからエス

       トロゲンを合成する酵素がアロマターゼでアロマターゼ阻害薬は乳癌(乳がん)組織でのエストロゲン代謝

       を阻害して濃度を低下させる。 閉経後の女性の主要なエストロゲン産生臓器は脂肪でありアロマターゼ阻

       害薬は閉経後乳癌に適用される。)




     
§3  乳癌(乳がん)罹患リスク/乳癌(乳がん)/乳房部/胸部/痛みと病気


       
女性ホルモン(エストロゲン)は乳癌(乳がん)細胞にあるエストロゲンレセプターに結合して、乳癌(乳がん)

       を増殖させる作用があると考えられております。 従いまして、生涯にわたって女性ホルモンに曝される期間

       が長いほど乳癌に罹るリスクが高いとされております。



       
近年、女性は初潮を経験する年齢は早くなり、その一方で、閉経を迎える年齢は遅くなっているため、エスト

       ロゲン分泌期間が長くなっており、その間、結婚年齢の晩婚化、少子化、あるいは結婚をされない女性も増

       加しております。乳癌(乳がん)は出産経験が少ないほどリスクが高い(エストロゲン暴露期間が長くなる)と

       されるため、益々、そのリスクが高いと言えるでしょう。 一生涯で女性の月経回数は400〜500回と、多産

       の傾向のあったころの女性よりもその回数は10倍近いと言われる報告があります。


       出産回数以外にも、授乳経験も乳癌罹患リスクに関係があるとされております。乳児に母乳を与える期間が

       短いと乳癌(乳がん)に罹患し易いと考えれており、 これは、授乳経験の無い乳腺や、授乳期間の短い場合

       には癌になり易いという事です。


       ホルモン補充療法は更年期障害での不定愁訴に適応される療法ですが、これが乳癌発症リスクを高めると

       考えられえおります。エストロゲンとプロゲステロンを併用する場合は、エストロゲン単独使用よりも、更に乳

       癌(乳がん)発症リスクは高いという事も分かっております。 その他、高齢初産も乳癌発症リスクを高めると

       されます。





     
ハイリスクグループ ローリスクグループ
年齢 高齢 若年
居住エリア 都市 農村
婚姻状況 未婚 既婚
初産年齢 高齢or30歳以上 若年・20歳以下
授乳経歴 なし 数年
初経年齢 早期、11歳以下 遅い
閉経年齢 遅い、55歳以上 早い、44歳以下
肥満度(閉経後) 肥満(BMI) 標準体重群(BMI)
良性の乳腺疾患既往 あり なし
乳汁中の異型細胞 あり 乳汁分泌なし
マンモグラフィーの結節性濃度 乳腺高濃度>75% 実質が脂肪
ホルモン補充療法 長期施療 なし
経口避妊薬 若年期長期使用 なし
放射線被曝 頻回or高線量 最小線量
アルコール 飲用 非飲用
家族性乳癌 あり なし
乳癌既往 あり なし
卵巣癌、内膜癌既往 あり なし




     §4  乳癌(乳がん)の類似疾患/乳癌(乳がん)/乳房部/胸部/痛みと病気


       
乳房のシコリや痛み、あるいは乳頭から分泌物でブラジャーが汚れるなど乳癌と間違い易い症状の疾患も

       あります。女性は、妊娠していない時や、妊娠時、授乳時と乳房の状態も環境で大きく異なりますし、それに

       よっても、乳房や、乳腺、 乳管などは大きく影響を受けます。 乳癌(乳がん)に似た様な症状に気付いたら、

       専門医に直ぐ相談をしましょう。 ご自分の状態をしっかり把握する事で、精神的不安を解消する事にも繋が

       ります。 以下の図は妊娠によりどの様に乳房が変化するのかを模式図で示されております。御参考にご覧

       下さい。



乳腺炎;乳腺に乳汁が溜まり、炎症を起こす病気す。急性乳腺炎には急性鬱滞性乳腺炎と急性化膿性乳腺炎があり、慢性乳腺炎には急性化膿性乳腺炎の治療をしっかり行わなかったために、慢性化したもの・授乳に関係なく起きるものもあります。

急性鬱滞性乳腺炎は初産の女性に多く見られるものです。出産後に乳汁が乳腺に溜まり、炎症を起こします。乳汁が沢山産生されるのに、乳管が十分に開いていなかったり、赤ちゃんが上手にお乳を飲めなかったりする事により、乳汁が乳腺に溜まる一方になってしまいます。乳房は硬く腫れ、熱を持ち、触るととても痛みます。これはまず、鬱滞している乳汁を出す事が先決です。乳房を温め、マッサージして乳汁を出しますと、とても楽になります。マッサージや温める事により、乳管が開き、乳汁の出はよくなります。出来るだけ赤ちゃんに乳汁を吸ってもらい、残っているようなら搾乳機で乳汁を吸い取り、おっぱいを空っぽの状態にするようにしましょう。

急性化膿性乳腺炎は赤ちゃんに乳頭を噛まれるなどして乳房内に細菌(ブドウ球菌、連鎖球菌など)が侵入して感染してしまったために起こすものです。これは急性鬱滞性乳腺炎が進行してもなってしまう事がよくあります。急性鬱滞性乳腺炎よりも激しい症状で、乳房は赤く腫れ、痛みの酷く、高熱が出て、悪寒・震えを伴なう事もあります。酷ければ、乳汁に膿や血液が混じります。授乳を中止し、搾乳機などで鬱滞をとり、乳房を冷やして、高熱を認めれば、抗生物質や消炎剤を服用する必要があります。急性鬱滞性乳腺炎同様に乳汁を鬱滞させずに、乳首をいつも清潔に保ち、傷があれば早めに手当てし、細菌感染を防ぐ、殺菌するなどの処置も必要になります。


乳腺症;乳腺症は20歳代〜50歳代の女性に多くみられます。乳腺症はシコリ、乳房の痛み、腫れ、肩凝り、頭痛など様々な症状が起こりますが、主症状はシコリですシコリは片側の乳房、あるいは両側の乳房に大小様々なものが出来るものです。月経前になるとシコリは大きくなり、その他の症状が強くなり、月経が終わるとシコリは小さくなり、症状が弱まるのが一般的です。このシコリの特徴は、指で触れますと、周囲との境界ははっきりせず、弾力性があり、表面にボコボコした塊があるのがわかります。乳腺症が乳癌に移行することはありませんが、乳腺症と乳癌が同居する可能性は無いとはいえませんので注意が必要になります。なぜこの様な症状になるのかは、エストロゲン(卵胞ホルモン)が過剰の場合に、起こり易いと考えられております。



乳腺線維腺腫;これは乳房に出来る良性の腫瘍で、15〜30歳代に多く確認でき、閉経後の女性には殆ど

確認されません。 乳腺をつくる線維組織と、腺組織が増殖して出来るものです。多くは、ご自分がシコリに

気づく事で受診するケースが大半です。
性状はクリクリと硬く、弾力性のある、小さな玉の様な、大きさは

大豆からうずら大のものまである、表面は滑らかなシコリで、可動性です
。数は1個〜多数と様々で、痛み

はありません。 この腫瘍は癌化する事は無く、経過を観察して、ご本人の希望があれば、切除する場合も

あります。入院の必要も無く治療が可能です。


その他葉状腫瘍、嚢胞などがあります。

葉状腫瘍は「乳腺線維腺腫」とシコリは似ておりますが、急激に大きくなる事があります。悪性化するもの

も有りますので、葉状腫瘍と判明しましたら、切除するのが賢明です。

嚢胞は良性のシコリで、中に液体がたまるものです。表面がツルツルした、痛みの無いもので、乳腺症の

一部と考えられております。ご本人の希望があれば、注射器で穿刺して液体を取り除きます。









     §5 乳癌(乳がん)の検査(検査機器等)/乳癌(乳がん)/乳房部/胸部/痛みと病気


       マンモグラフィー、超音波検査、マンモトーム生検、穿刺吸引細胞診、乳頭分泌物細胞診、乳管造影検査、

       乳管内視鏡検査などがあります。その他ヘリカルCT検査、ガドリニウム造影MRI検査、腫瘍マーカー、(

       EACA15-3NCC-ST-439BCA225など)、骨シンチグラフィー、PETなどがあります。




       乳癌(乳がん)の疑いを持ちますとまず外科の出来れば乳腺外科、乳腺外来に受診しますが、問診(症状、

       月経の有無、最終月経、家族歴)、視診触診(乳房、腋の下、鎖骨上下リンパ節などを目視、指で触れてし

       こりや皮膚の変化、異常の有無の確認)の後、超音波検査、マンモグラフィーによる検査が行われます。

       ンモグラフィー・超音波検査で異常所見があれば細胞診・針生検になります。 この際、良性ならば経過観

       察、悪性ならば即、乳癌として入院治療となり、乳癌の疑いとなれば生検を行い診断を確定させます。この

       際に悪性の診断であれば乳癌として入院治療、良性であれば経過観察となります。生検はしこりや石灰化

       の組織を取り出して癌細胞の有無を調べて確定するための検査で、 外科的に組織を摘出する摘出生検(

       外科生検)と、針を刺して組織の一部を採取する針生検がありますが、近年は患者さんの負担の少ない針

       生検が主流となっております。 針生検には穿刺吸引細胞診よりやや太目の針で組織を切り取るコア針生

       検と、更にもう少し太目の針で組織を切り取り吸引するマンモトーム生検(吸引式針生検)が有りますがマ

       ンモトーム生検が主流です。何れも局所麻酔をします。











     
§6 乳癌(乳がん)の療法/乳癌(乳がん)/乳房部/胸部/痛みと病気


      
§6−1 乳癌(乳がん)の外科療法/乳癌(乳がん)/乳房部/胸部/痛みと病気


       
「ハルステッド手術・乳房温存療法」、「乳房部分切除術、乳房部分切除+放射線療法、乳房切除術」など無

       作為の条件下での臨床試験結果の検証は長年の間研究、 検討されてきました。その結果生存率に大きな

       差を認めないという結果が得られている事もあり、T期、U期の治療では乳房温存療法が優先の選択肢に

       なってきております。ただ、複数の臨床試験で乳房全体を切除する場合と部分切除では生存率に差はない

       ものの、 乳房を部分切除した場合では乳房の局所再発率は部分切除の方が高いという結果が報告されて

       いる場合もあります。


       ある事例では、50歳代の女性で、浸潤性乳癌が患者さんの強い希望で縮小手術になった様です。しかし、

       このケースの腫瘍は中央のしこりの部分のみならず、 周辺部にも広く浸潤しており、迅速診断に提出され

       た、断端部は陽性で、リンパ節転移も確認された。 このケースが縮小手術となると、手術中に癌組織を切

       り刻んでいるのに等しく、 かえって癌細胞を体中に撒き散らしてしまう可能性があるとされる事例です。縮

       小手術は 出来るものと、出来ないものがあります  






       * 近年の傾向では、胸筋温存乳房切除術と乳房温存手術(乳房部分切除術)で、手術は殆どを占めており

       ます。乳房温存療法ではその手術の適応の条件としまして、腫瘤の大きさが3cm以下であり、(良好な整容

       性が保たれる様で有れば4pまで)、各種の画像診断(超音波、マンモグラフィ、MRI、CTなど)で、広範な乳

       管内進展を示す所見のないもの、多発病巣の無いもの(2個の病巣が近傍に存在する場合は含めても良い)、

       放射線が可能なもの (重篤な膠原病の合併症がなく、同側胸部の放射線既往では無く、患者さんが、照射を

       希望する場合)、 患者さんが乳房温存療法を希望する事などの条件が満たされれば、手術適応があるとされ

       ます。



       




     §6−2 乳癌(乳がん)の放射線療法/乳癌(乳がん)/乳房部/胸部/痛みと病気


       
乳癌(乳がん)細胞は正常細胞より放射線の作用を受け易いのでできるだけ正常細胞を傷つけない線量で

       乳癌細胞を攻撃します。放射線維の適切な治療により放射線療法は化学療法より副作用が少ないといわれ

       ております。放射線療法は扁平上皮癌によく効果を発揮し、腺癌には効き難いとされます。乳癌の放射線療

       法は乳房温存手術後(通常5日/週合計5〜6週実施)、乳房切除術後、手術不可能な進行乳癌の術前治療、

       再発、転移などの防止を目的として施療されます。 放射線療法は欧米では積極的に実施されておりその臨

       床試験結果でも乳房温存手術の場合での局所再発率は、 照射なしのグループに比し、大幅に(35%→10

       %)改善しております。「乳房温存ガイドライン」でも「乳房温存手術後の全乳房照射は現時点では必須の治

       療法と考えるべき」と提言しております。放射線療法は局所療法としても有効とされますが副作用もあります。

       急性障害と晩期障害がありますが急性障害の場合は皮膚が日焼けしたように赤くなり、それが黒くなって皮

       もむけてきます。皮膚が乾燥に痒くなったり、水ぶくれになる事もあります。一方晩期障害では数ヶ月〜数年

       後、皮膚の萎縮、毛細血管の拡張、皮膚組織や乳腺の硬化、乳腺の萎縮などがおこります。晩期障害の場

       合は治り難い事が知られておりますが、照射が適切であれば重症晩期障害が発現する事はまれであるとさ

       れております。 放射線療法は痛みは殆どなく、皮膚の温度はわずかに(1/2000度)上がる程度で、一回の

       照射時間も1〜2分程度です。





      §6−3 乳癌(乳がん)の化学療法/乳癌(乳がん)/乳房部/胸部/痛みと病気


       
抗癌剤は注射薬と経口剤が有りますが投与は一定の間隔で1クール(1サイクル)を通常4〜6週間程度の

       間隔で実施されます。 副作用は個人差もあり種類によっても異なりますが主には骨髄の機能が抑制される

       ために起きる白血球減少が多く、赤血球減少などそれに伴う症状がおきてきます。 例えば白血球減少では

       感染症、発熱、風邪、虫歯、食中毒などが起こり易くなります。 2週間程度経過すれば回復して来ます。好

       中球の数値がそのバロメーターとなります。 赤血球では鉄欠乏性貧血、だるさ、疲れ易さ、めまい、息切れ

       などが起こりやすく、血小板が減少すれば出血傾向になります。体温や咽頭炎、膀胱炎などの感染症にも

       注意が必要です。 乳癌の化学療法では多剤併用療法も採用される事があります。例えばCMF療法やCA

       F療法などが術後化学療法として行われておりますが、副作用が強いのでエストロゲン受容体、プロゲステ

       ロン受容体陰性例、リンパ節転移例、若年発症例など比較的ハイリスクの症例で適応されます。


抗癌剤            副作用
ドキソルビシン(アンスラサイクリン系) 白血球減少、吐き気、嘔吐、心筋障害、脱毛など
エピルビシン(アンスラサイクリン系) やや軽度の白血球減少、吐き気、嘔吐、心筋障害、脱毛など
ドセタキセル(タキサン系) 白血球減少、痺れ、脱毛など
パクリタキセル(タキサン系) 白血球減少、痺れ、脱毛など、まれにショック
シクロフォスファマイド 白血球減少、出血性膀胱炎など
メトトレキサート 肝障害、腎障害、口内炎など
フルオロウラシル5-FU 軽い消化器症状、皮膚の色素沈着、嗅覚障害など







       近年再発・転移性乳癌に対し従来にない分子標的治療薬も登場しておりますが、これは病気の原因になる

       分子だけに作用する薬剤です。 癌細胞にあるHER2という増殖に必要な情報を外部から細胞内に取り込む

       働きをする受容体に作用する薬剤で、このトラスツズマブはHER2受容体と結合して情報を取り込めなくしま

       す。トラスツズマブが効くか否かはHER2受容体が過剰に発現しているかどうかで判断します。HER2受容体

       陽性の人はホルモン受容体陰性の人に多いのでホルモン受容体陰性であるのか否かは重要です。 HER2

       受容体陽性の人は乳癌全体の15〜25%存在すると考えられております。ウィークリー・タキソールとの併

       用がより効果的と考えられており単独・併用療法どちらも推奨されております。 トラスツズマブの副作用は

       発熱・悪寒が初回投与の40%、2回目以降は5%程度になります。 心不全も起こる事があり、5%の人に

       は軽い運動でも息が切れるなどの症状がでますので心臓に問題のある人はアンスラサイクリン(心臓に副

       作用)の併用は出来ません。




      §6−4 乳癌(乳がん)のホルモン療法/乳癌(乳がん)/乳房部/胸部/痛みと病気


       
ホルモン療法は作用が比較的穏やかで長期間使い続ける事により効果を発揮し、タモキシフェン(抗エスト

       ロゲン剤)の場合は5年が最も有効とされております。ホルモン療法剤には抗エストロゲン製剤(エストロゲ

       ンとエストロゲン受容体の結合をブロックし乳癌細胞を抑制)、LH-Rha製剤(卵巣機能を抑制し、エストロゲ

       ン分泌低下により乳癌細胞を抑制)、 アロマターゼ阻害剤(卵巣機能の失った閉経後の方に適用)、プロゲ

       ステロン製剤(何故乳癌に効果があるのか不明)があります。


       スイスのザンクトガレンでの国際会議合意事項としての推奨治療はホルモン感受性のある閉経前の中間リ

       スク群に対し「タモキシフェン(抗エストロゲン剤)±LH-RHa」「化学療法→タモキシフェン±LH-RHa」となっ

       ております。「±」とは必要に応じ加減の意です。 「」内の左側の投与後の経過から必要に応じて右側のも

       のを加減するわけです。 タモキシフェンは乳癌術後療法として最もよく使用されている抗エストロゲン製剤

       (エストロゲンと癌細胞にあるエストロゲン受容体との結合を阻害することで癌細胞の増殖を抑制する)です。


       エストロゲンの分泌を抑える事により乳癌(乳がん)を抑える考え方で、エストロゲンは脳の視床下部から性

       腺刺激ホルモン放出ホルモン(ゴナドトロピン放出ホルモン)が分泌され、その刺激により下垂体から.刺

       激ホルモンが分泌されますが、 その刺激によりエストロゲンが卵巣より分泌されます。LH-RHa(アゴニスト

       製剤) は脳下垂体からのゴナドトロピンの分泌を阻害してエストロゲンの分泌を抑えます。乳癌の60〜70

       %程度がエストロゲンの影響を受けて増殖すると考えられておりますのでエストロゲンの作用を阻害したり、

       分泌を抑えることが乳癌増殖を抑えることに繋がる考え方です。 LH-RHaは注射薬で閉経前の人に効果が

       あり皮下注射を1回/4週・1回/12週のタイプがあります。 通常2年間の療法中は生理は止まりますが、投

       与を中止すると卵巣機能の回復と共に月経も戻ります。


       閉経後の方の場合は卵巣からのエストロゲンは分泌されなくても、脂肪組織のアロマターゼという酵素の作

       用を受けたアンドロゲン (副腎からの分泌による)がエストロゲンに変換されるため、これをブロックするため

       のアロマターゼ阻害薬を投与します。 閉経後の方に効果があります。近年の報告ではアロマターゼ阻害剤

       とタモキシフェン製剤の5年間投与でアナストロゾール(アロマターゼ阻害剤/DNA合成抑制、下垂体・副腎・

       .系への抑制作用、 抗エストロゲン作用などにより乳癌細胞を抑制する)を5年間投与するほうが再発を

       防ぐというものもあります。更に、タモキシフェンを5年間投与後、レトロゾール(アロマターゼ阻害剤/副作用

       として吐き気、無月経)を5年間追加投与すると タモキシフェンを5年間だけのケースより再発を防ぐ効果が

       あるという報告もあります。


       もう一つの選択肢としてタモキシフェンを2〜3年投与後にエキセメスタンへの切り替えをして合計で5年間

       の投与でタモキシフェン5年間単独投与より高い効果を認めたという報告もあり、ホルモン療法の選択肢は

       増加傾向にあります。




      §6−5 乳癌(乳がん)の温存療法/乳癌(乳がん)/乳房部/胸部/痛みと病気


       
乳房を切らない乳房温存療法が普及しておりますが、この場合は放射線療法を併用するのが基本になっ

       ております。





      
§6−6 センチネルリンパ節生検/乳癌(乳がん)/乳房部/胸部/痛みと病気


       
センチネルリンパ節は乳癌(乳がん)細胞が最初に通過するリンパ節でこのセンチネルリンパ節生検という

       新療法は従来の乳癌手術のQOLを損なう最大の理由であるリンパ節郭清術が、 乳癌研究が進展するに

       つれリンパ節郭清のタイミングに問題がある事が判明してきたために登場して来た考え方です。即ち、乳癌

       は浸潤癌になった段階で 既に癌細胞がリンパ節を経由せずに血中に出て全身に広まっていると考えられ

       るようになりました。


       この段階でのリンパ節郭清による乳癌転移は完全には防げない事が分かってきました。更に統計的に検証

       しますと、 リンパ節を郭清しても遠隔転移の率や生存率に差が無いという事も分かって来ました。乳がんの

       リンパ節転移は一定の道筋があり、この乳癌細胞が最初に流れ着くリンパ節が1〜2個である事が分かって

       きました。 つまり、センチネルリンパ節に転移が無ければ他のリンパ節に転移が無いという考え方です。これ

       は当該リンパ節に転移が無ければ他のリンパ節郭清の必要が無いことになります。 sentinelとは見張り、前

       哨の意味です。センチネルリンパ節生検はラジオアイソトープと青い色素を使い癌の近くに注入します。

その上でガンマプローブという放射性物質に

反応する センサーのような器具を皮膚の上

に当ててアイソトープの追跡をし、 ガンマプ

ローブの反応した箇所が センチネルリンパ

節です。 ここを切除して即時、癌細胞の有

無を確認します。乳癌細胞が無ければ、転

移が無いと判断します。 但しこの方法は確

実ではまだ無く、センチネルリンパ節の見つ

からないケース、センチネルリンパ節に転移

が無いのに腋下リンパ節に転移の見つかる

ケースもありますし、 手術時の病理検査で

結果が覆される事もあります。 現在大規模

な臨床段階ですが、 この技術は更に進展し

て行くものと考えられております。

センチネルリンパ節生検では、2〜3個のリンパ節を採取して転移の有無を調べますが、ある調査では、

生検だけでリンパ節郭清をしなかった106人のうち、35人に浮腫が確認されました。この浮腫はリンパ

節郭清のグループでは60%に確認されておりますので、それよりは少ないのですが、海外の文献では

通常5%程度とされていますので、この原因として、センチネルリンパ節を探す過程で、周辺のリンパ節

を傷付けているのではないかと、 推測されております。 郭清しても浮腫はある程度、予防できるとされ、

浮腫に対する予防、治療に関する分野の教育や配慮などもなされなければならない。















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